歯科麻酔の種類や副作用、アレルギーについて解説
歯科治療には、痛みや不快感などを伴う場面も多いことから、苦手意識を持っている方もいらっしゃることでしょう。日本では「歯医者さんは痛くなってから行くところ」という意識が広く根付いており、治療を受ける頃には重症化していることも珍しくありません。
ただ、痛みを伴う治療には、必ず麻酔を施すため、実際にはそれほど辛い思いをすることはないのが現実です。ここではそんな歯科治療で行う麻酔の種類や副作用、禁忌行為などをわかりやすく解説します。
治療別、使う麻酔の種類と費用感、その効果時間・副作用について
歯科では、治療に応じて異なる種類の麻酔を使用します。それぞれ費用や効果時間、副作用などが異なります。
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むし歯治療
むし歯治療では、主に「表面麻酔」と「局所麻酔」を行います。
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表面麻酔
表面麻酔は、ジェル状の薬剤を歯茎などの粘膜に塗布する処置で、それ自体に痛みや不快感などは一切生じません。麻酔針の刺入時の痛みを軽減するもので、薬剤を塗布して5分くらいで粘膜の感覚が麻痺してきます。効果時間はそれほど長くなく、副作用もほとんどありません。費用は数十円程度です。
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局所麻酔
局所麻酔は、麻酔針を使って歯茎などに薬液を注入する処置です。歯茎に針を刺す際の痛みが苦手な方も多いことかと思います。表面麻酔を施すことで、その痛みは軽減されます。効果は治療後もしばらく続くことから、誤って唇や舌を噛んだりしないよう注意しなければなりません。2~3時間も経過すれば、麻酔の効果も消失します。体質や体調によっては、局所麻酔アレルギーを起こすことがあります。局所麻酔にかかる費用は、100円程度です。
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インプラントなどの外科処置
インプラント手術のような外科処置では、表面麻酔や局所麻酔に加え、「静脈内鎮静法」と呼ばれる麻酔を行うことがあります。
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静脈内鎮静法
静脈内鎮静法とは、その名の通り静脈から鎮静剤を投与する処置法です。「痛みを軽減する」のではなく、「心を落ち着かせる」ための麻酔法です。鎮静剤の効果が現れると、半分眠ったような状態になります。不安感や恐怖心が取り除かれ、リラックスした状態で手術を受けることが可能です。手術中の記憶が薄れる健忘効果(けんぼうこうか)も期待でき、歯科治療が怖い、手術な不安な方にはおすすめの麻酔法といえます。
静脈内鎮静法は、治療後も数時間継続することから、当日は車の運転等を控える必要があります。費用は保険診療か自費診療かによって、大きく異なります。歯科治療恐怖症や何らかの障害を抱えている方の場合は、保険診療で出費は数千円程度となります。自費診療では、数万円の費用がかかります。麻酔科医を立ち会わせるかによっても費用は大きく変わります。
麻酔が効くメカニズムについて
麻酔が効くメカニズムというのは、非常に複雑で未だに解明されていない部分もあります。使用する薬剤によってもそのメカニズムは異なることから、一概にいうことはできませんが、局所麻酔を例にとってシンプルに説明すると、「末梢神経のブロック」です。
歯や歯周組織に分布している神経を麻酔薬によって遮断することで、治療時の痛みを抑止します。厳密には、NaチャネルにNaが流入するのを防ぎ、活動電位の発生を抑えます。その結果、痛みを感じにくくなるのです。
麻酔治療において避けるべき行為
麻酔を伴う歯科治療を受けた際には、以下に挙げるような行為を控えましょう。
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飲酒
お酒を飲むと全身の血流が良くなります。血管も拡張され、麻酔薬の効果に悪影響を及ぼすことがあります。治療後の飲酒も麻酔効果の延長や患部の痛みを助長するなど、さまざまなトラブルが起こり得るため、飲酒を控えるのが原則です。
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激しい運動・熱い湯船への入浴
治療の前後に激しい運動や熱い湯船に浸かったりすると、全身の血流が良くなります。麻酔効果や患部の状態に悪影響を及ぼすことから、控えるようにしましょう。
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治療直後の食事
麻酔薬の効果は、治療後もしばらく続きます。その間に食事をしたり、会話したりすると、誤って唇や舌を噛んでしまうことがありますので注意しましょう。これを誤咬(ごこう)といいます。お口の感覚が麻痺していることから、熱いもので火傷をする場合もあるため、麻酔が切れるまでは食事を控えることが大切です。
麻酔とアレルギーの関係、その対処について
麻酔によって生じるアレルギーは、その人の体質に大きく左右されます。歯科麻酔で気分が不快になったり、蕁麻疹が現れたりした経験があれば、事前に歯医者さんに伝えておきましょう。アレルギーが起こりにくい薬剤を選択することで、安全に治療を進めることが可能となります。ちなみに、歯医者さんはアナフィラキシーショックのようなアレルギー症状が現れても、迅速に対応できる訓練を積んでおりますので、万が一の場合もご安心ください。