ことばと離乳 7か月~1歳6か月 南森町・増田歯科
赤ちゃんののどは、喉頭蓋と軟口蓋が接しています。
サルと同じで、鼻腔から気道までほとんどひと続きです。
このため赤ちゃんは、おっぱいで口を塞いだままでも鼻だけで楽に呼吸をします。
喉頭が高い位置にあるので、呼吸をしながらお乳を飲んでもむせることがないのです。
産科では、生まれたばかりの赤ちゃんを<鼻で呼吸する者>と呼ぶくらいなのです。
実は、哺乳類で、ヒトだけが、例外的に口で呼吸のできる動物であり、そのために唯一複雑なことばを操ることができる動物でもあります。
7か月ごろからつかまり立ちができるようになり、1歳のころに、ひとり立ちができるようになるものですが、からだが起き上がると、次第に舌骨とともに喉頭が下に降りてきて、成長とともに一息の間に複雑な発音が可能になりしゃべりことばが発達します。
さらに軟口蓋で鼻腔に呼気が漏れるのを妨げるようになると、複雑な構音が可能になります。
もちろん、おしゃべりができるようになるには、耳で聞く能力、マネをする能力、そして指さしのような指示思考などの総合的な能力の発達を待たなければなりません。
ところが、複雑な発音ができるようになるのと引き替えに、ヒトの喉頭は危険な構造になってしまいます。
食道と気道が交差する関係になるのです。
食べ物の移動にタイミングを合わせて、鼻腔と喉頭を閉鎖しなければなりません。
それなしには、食べ物が誤って気道に入ってしまいます。
鼻腔と喉頭を閉じて、食べ物をゴックンと飲み込むわざを身につけなければなりません。
口から食べることは、離乳初期の赤ちゃんにとって大きな冒険です。
ゴックンと飲み込むためには、舌で食べ物を口の奥に送るだけではだめなのです。
まず、軟口蓋と舌で口腔を閉鎖して、食べ物をのどに送ります。
次に鼻咽腔と喉頭を閉鎖し、食べ物を咽頭部に運び、ここで一瞬呼吸を止め、その瞬間、食べ物をゴックンと食道に送り込みます。
喉頭蓋の倒れ込みと声門閉鎖によって食べ物が誤って気管に入らないようにしているのです。
口から食べるためには、この連続技を習得しなければなりません
しゃべりことばと嚥下の獲得は表裏一体の関係にありますが、離乳期はその大仕事の時期なのです。